-Story-3つの物語
コア・フード牛肉編

「理想の牛肉」を夢で終わらせない

「放牧中心の飼育で赤身の牛肉を作り、組合員に届ける」―日本の牛肉生産のあり様に疑問を投げかけ、理想の姿を体現した牛肉。それが「コア・フード牛肉」です。

日本でおいしい牛肉といえば、だれもが「霜降り牛肉」を想像することでしょう。しかし、サシ、つまり脂肪のたくさん入った肉を作るためには、高カロリーな穀物飼料を短期間に大量に与えて牛を太らせなければいけません。牛に負担がかかるため、抗生物質など薬剤を使うことにもつながります。そんな近代畜産とはまったく異なる方向をめざしているのがコア・フード牛肉です。牛の特性を生かしたよりよい生産と消費の姿を追求し続けてきました。

国産飼料100%の牛肉! 地域の資源を循環させる

国産の肉牛の多くはサシの入りやすい黒毛和種とその交雑種。一方、コア・フード牛は牧草などの粗飼料でも太りやすい、放牧に適したアンガス種(一部アンガス系統種)です。国内ではアンガス種自体珍しい品種ですが、さらに本品は「国産飼料100%」で育てた牛肉。輸入穀物飼料をいっさい使わない国産牛肉は、極めて希少です。

代わりに牛たちが食べているのは、生産者が育てた牧草やデントコーンなどの自給飼料と、周辺工場から出るじゃがいもかすやビール粕などの食品副産物。地域資源の循環にもひと役買いながら、牛の生理にあった育て方で、健康的にのびのびと育てています。

志ある生産者と組合員を、「予約登録」で結ぶ

理想の体現として商品化された放牧・赤身の牛肉でしたが、なじみのない赤身肉をどう調理してよいかわからないという声が相次ぎ、利用はなかなか進みませんでした。

転機となったのは2000年。生産を継続するための苦肉の策として「予約登録制度」での供給がスタートします。取り組みに共感した組合員を会員化し、月に1回さまざまな部位をバランスよく届けるしくみです。この制度により、希少な牛を一頭丸ごと、余すことなく食卓に届けることが可能に。「畜産の理想を実現したい」という同じ志をもつ生産者と消費者を直接結ぶことで、今日まで生産を継続することができています。

草原で寄り添う親子の姿に代えがたい価値がある

A5やA3といった霜降りの具合で良しあしを判断するランク付けを行えば、コア・フード牛肉はおそらく低い評価となります。しかし、草原でゆったりと草をはみ、親子寄り添って暮らす牛たちの様子をひと目見れば、既存の格付けでは表せない価値がそこにあることを疑う人はいないはずです。

昨今、赤身肉の価値が見直され始め、コア・フード牛肉を多くの人に知ってもらうチャンスがやっと巡ってきました。10年20年先まで続けられるよう、利用と生産量を少しずつ増やしていくことが当面の課題です。日本の畜産の未来を指し示す事例として、産地と組合員とが手を結び、価値ある生産を続けていきます。