一部電力会社の系統連系「回答保留」に政府へ意見を提出 地域主導で再エネを積極活用できる体制を

2014年11月19日

パルシステムは11月18日(火)、宮沢洋一経済産業大臣へ一部電力会社の系統連系「回答保留」に対する意見を提出しました。より広範な議論が行われるよう、国のリーダーシップの発揮を求めます。

 パルシステムは11月18日(火)、宮沢洋一経済産業大臣へ一部電力会社の系統連系「回答保留」に対する意見を提出しました。

九州電力に続き合計5つの電力会社が、自然エネルギー接続申し込みに対し「回答保留」などとする措置を表明しました。安定的に発電する地熱発電やバイオマス発電まで、一括して「回答保留」扱いとし、出力調整などの提案も求めています。

必要なデータの公表もないまま、地域と事業者に多大な影響を与える措置を突如開始するのは、説明責任を果たしているとはいえません。国は、今回の電力会社の措置を事前に承知していたのか、どのような対応をしてきたのか、国民に対する明確な説明、そして制度改革、広範な議論と再生可能エネルギーのさらなる推進を求めます。

要求した項目は、以下の通りです。

1.
電力会社および国の十分な説明責任を
2.
固定価格買取制度の継続を前提に公開での検討を
3.
地域主導の自立分散型ネットワークの再エネ推進を
(1)
先進事例に学び、再エネを積極活用できる体制を確立する
(2)
再エネ活用の準備と情報公開を直ちに進める
(3)
地域主導の再エネ発電の優先とバランスを配慮する
(4)
地域限定での系統制約の費用負担方法の見直しをする

提出したパブリックコメント全文は以下の通りです。

2014年11月18日
一部電力会社の系統連系「回答保留」に対する意見
パルシステム生活協同組合連合会 理事長 山本伸司
パルシステムエネルギー政策推進委員会 委員長 白川恵子

1.電力会社および国の十分な説明責任を

 九州電力に続き合計5つの電力会社が、自然エネルギー接続申込みへの「回答保留」などの措置を表明しました。各電力会社はその理由として、認定を受けた再エネ電力が大きすぎて、電力供給が不安定になり、停電になる懸念もあると説明しています。

 しかし、大量の認定設備が実際に発電を開始するまでには、数年間を要すると考えられます。さらに、安定的に発電する地熱発電やバイオマス発電まで、一括して「回答保留」扱いとし、出力調整などの提案を求めるのも不可解です。必要なデータの公表もないまま、地域と事業者に多大な影響を与える措置を突如開始するのは、十分な説明責任を果たしているとは言えません。

 一方、国は、「電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法」において、円滑な接続のために必要な場合には、電気事業者に対し指導及び助言をできる立場にあります。国は、今回の電力会社の措置を事前に承知していたのか、どのような対応をしてきたのか、国民に対する明確な説明を求めます。

2.固定価格買取制度の継続を前提に公開での検討を

 今回の事態は、急速な太陽光発電の拡大に対して、従来の系統運用が追いつかなくなった「限界」を露呈しています。実際、再エネ導入を基幹電源のひとつとして積極的に活用してきた欧米の国や地域では、年間総発電量の20%から30%という再エネを電力系統の中に取り込みながら、なおかつ安定的な電力供給を実現しています。九州電力などは、今後、「揚水運転の実施や地域間連系線の活用」などを検討するとしており、国も新たに設置された「系統ワーキンググループ」で、調整電源の更なる活用、発電出力予測の活用、需要対策なども含め、接続可能量の拡大について検討を行うとしています。

 これらの検討は当然のことですが、国と電力会社が、再エネを積極的に活用する準備を怠ってきたことにこそ、今回の原因があります。固定価格買取制度(FIT)の継続を前提に、「系統ワーキンググループ」の検討は公開で行い、海外の先進的な取り組みをしている国や地域の専門家の意見を直接聞くなど、電力会社の狭い利益にとらわれない議論が行われるよう、国のリーダーシップの発揮を求めます。

3.地域主導の自立分散型ネットワークの再エネ推進を

 現在、日本の電力供給の大半は、海外から輸入する化石燃料に依存しています。このような海外依存を続ければ、日本経済やエネルギー安全保障上も懸念されます。東日本大震災では、災害時における大規模集中の電力システムの脆弱さを露呈し、自立分散型ネットワークの電力システムへの転換が強く求められています。

 こうした状況を踏まえれば、地域主導の自立分散型ネットワークに適した再エネを推進することは、必要不可欠な重要課題です。今回の事態は、再エネが基幹電源のひとつになるポテンシャルが十分にあることを示したものであり、その実現のために、以下の取り組みの実施を求めます。

(1)先進事例に学び、再エネを積極活用できる体制を確立する
 再エネを基幹電源のひとつとして積極活用してきた欧米の先進事例に学び、①気象予測システムの整備、②揚水発電や火力発電の積極的変動による再エネ活用、③再エネ設備も含めた発電所への給電指令システムの整備、④地域間連系線の積極活用と広域的需給調整の導入、⑤デマンドレスポンスなど需要側・分散型電源を活用する市場整備など、再エネを積極活用できる体制を早急に確立することを求めます。

(2)再エネ活用の準備と情報公開を直ちに進める
 今回の再エネ活用準備の遅れを教訓として、電力制度改革のスケジュールを待たず、電力系統の運用を電力会社まかせではなく、国や広域的運用推進機関、独立的な規制機関が関与する仕組みづくりを急ぐことが必要です。その第1歩として、系統を流れる電力量や火力発電や再エネ発電量のリアルタイムな情報公開を求めます。

(3)地域主導の再エネ発電の優先とバランスを配慮する
 今回の事態は、系統接続の重要性を浮き彫りにしただけでなく、電力系統の運用の優先順位や再エネ発電方法のバランスの重要性も改めて明らかにしました。優先順位については、地域社会の合意形成と共に、より地域の利益になるような電力開発を目指すことが重要です。地域外資本による開発に対して、地域資本の開発の場合、地域への経済的な恩恵がおよそ二倍という試算もあります。また、東北地方など、地域主導の再エネ事業を開始したところでは、雇用や地域経済を生みだし、自力での復興の第1歩を踏み出したばかりです。今回の「回答の留保」はそうした震災復興への期待に水を浴びせることになりかねず、地域主導の再エネ発電の優先配慮を求めます。
 再エネ発電方法のバランスについては、地域の合意形成、環境影響評価、資源循環のしくみづくりに数年必要なバイオマス、地熱、小水力発電への配慮を求めます。バイオマス、地熱、小水力発電は、気象の影響が少なく、24時間365日発電可能な安定電源であり、地域の農林漁業やその6次産業化、温泉等の観光資源の活性化等の地域経済効果も期待されています。

(4)地域限定での系統制約の費用負担方法の見直しをする
 今回の「回答の保留」は系統全体に関わるものですが、一方で、地域限定での系統制約も顕在化しつつあります。再エネ事業者に要求される連系負担金も十億円を超える場合もあり、すでに多額の投資をしてきた再エネ事業を断念せざるを得ない事例も少なくありません。

 その背景には、電力会社の持つ送変電設備の増強・新設の費用を「原因者負担の原則」に沿って再エネ事業者に求めていることがあります。ところが道路と同様な「公共的な資本」である送変電設備は、本来、その利用者全体が負担すべきで、欧州もそうした原則に基づいて送電事業者が負担しています。高額で公共的な連系負担金については、送電部門の総括原価に上乗せして、送変電システムの利用者全体が公平に負担するように見直すことを求めます。

以上