左メニューへジャンプ
本文へジャンプ
ここから上部共通ナビゲーションです
ホーム社会貢献活動社会貢献活動レポート > 第82回 「できることはすべてやる」を合言葉に 原木しいたけ生産者の放射能対策
ここから左メニューです
ここから本文です

社会貢献活動レポート

目次へ
第81回へ
第83回へ

第82回 「できることはすべてやる」を合言葉に 原木しいたけ生産者の放射能対策

▲「震災復興基金」が活用された、原木しいたけの「人工ほだ木場」

▲土壌からの放射能移行を防ぐため、人工ほだ場は土壌の入れ替えも行いました

▲肉厚で香りのよい、良質なしいたけが育つ原木栽培

JAつくば市谷田部産直部会(左から)吉葉さん、佐野さん、飯泉さん

産直産地・JAつくば市谷田部産直部会(茨城県)で原木栽培されたしいたけは、「肉厚で風味が豊か」と、組合員からも好評。しかし東京電力福島第一原発事故以降、放射能の影響への心配から利用の減少が続いています。生産者は放射能検査や原木の洗浄などに取り組んできましたが、対策には人員の配置やトレーサビリティの確立など、多くの経済的、人的負担が重くのしかかります。さらに原木自体の主産地が福島県のため、他県で安全性の高い原木の確保に奔走しなければなりません。
パルシステムは、苦境を乗り越える努力をしている産地を「震災復興基金(※)」を活用して支援しています。今回は、その基金を利用した原木しいたけ産地の、努力の足跡を追いました。

(※)東日本大震災で被災した産地、取引先の支援と地域再生を目的に創設された基金です。
種菌植え付け直後の原発事故 直後報道は「放射能拡散なし」

原木しいたけの栽培方法はまず、原木に穴をあけ種菌を植え付けます。しいたけの菌は原木全体に浸透し、木の栄養分を吸ってしいたけが育ち、収穫するしくみです。種菌を植え付けてから収穫できるまでの期間は、早くて1年。つまり、原木を仕入れても1年間は収穫ができません。種菌を植えつけられた原木を「ほだ木」と呼びます。ほだ木は極端な気温の変化を避けるため、林の中に整備した「ほだ木場」や、それを模して直射日光を遮断した施設「人工ほだ木場」で保管され、しいたけが生えるのを待ちます。

原発事故が発生したのは、生産者のみなさんが種菌を植え付けた直後の時期でした。「直後の報道では『水素爆発』とだけ報じられ、放射性物質の拡散はないとの発表でした。現在のような事態になるとは、夢にも思いませんでした」と、生産者の1人、吉葉昭夫さんは渋面のまま語ります。「はじめから本当のことを教えてくれれば、もっと対策を講じられたのですが」。

放射性物質の拡散が知らされたときは、すでにそれが地上へ降下した後でした。「林のほだ木場で寝かせていた多くのほだ木には、放射性物質が降りかかってしまいました」と、別の生産者、飯泉厚彦さんは悔しそうな表情で振り返ります。そこから、生産者のみなさんによる苦渋の放射能対策が始まりました。

10万本の原木を処分することに 「管理」「検査」「洗浄」を徹底

放射能対策といっても、産地にも経験があったわけではありません。同じ原木しいたけを栽培する生産者のネットワークやパルシステムとの情報交換などを積み重ね、知見を蓄積していきました。度重なる検討のうえ、講じられた対策が「管理」「検査」「洗浄」です。

管理はまず、原発事故後、屋内に保管していたり、ビニールシートに覆われていなかったほだ木をすべて栽培に使用しないことにしました。処分数は、JAつくば市谷田部のしいたけ生産者あわせて10万本にのぼりました。年間での使用本数は45万本ですから、4分の1近くに相当します。「寒い時期だったため、温度を保つ必要からビニールシートをかけていたほだ木がありました。時期的にまだ寒かったのは、不幸中の幸いかもしれません」(飯泉さん)。

ビニールシートに覆われたほだ木は、そのままでは気温の上昇とともに状態が悪くなってしまいます。そこで建設したのが、ハウス型の人工ほだ木場でした。直射日光をさえぎる特殊なシートに覆われた人工ほだ木場は、真夏でも涼しさを感じられるほどに温度が保たれています。建設に際しては、土壌からの放射性物質移行を避けるため、土の入れ替えまで実施。「少しでもリスクを回避するためです」と、飯泉さんは説明します。

パルシステムの「震災復興基金」は、この人工ほだ木場の建設費用として活用されました。「建設には土地も確保しなければなりません。ふつうなら『(しいたけの栽培を)やめよう』と考えるところでしたが、支援は本当に助かっています」と、もう1人の生産者、佐野浩さんは話してくれました。

当初はホースとたわしで洗浄 「できることはやろう」合言葉に

検査は、収穫されたしいたけはもちろん、植菌前のほだ木から行っています。仕入れた入荷単位ごとに放射性物質の検査を実施し、安全性を確認。さらに、しいたけで高い放射性物質が確認された場合を想定し、ほだ木1本1本に印をつけて対象がどれかをすべて分かるようにしました。

洗浄は、放射性物質がほだ木の表面に付着している可能性が高いことから、ほぼすべてのほだ木を高圧洗浄機にかけています。ほだ木を高圧洗浄機にかけると、せっかく植菌した部分が取れてしまうことも。また、ほだ木は衝撃を受けるとしいたけが生えやすく、「高圧洗浄による衝撃で、小さなしいたけがいっせいに生えてしまうことがあり、困っています」と飯泉さんは笑います。

機械導入前は、ホースとたわしで行っていました。10万の単位でほだ木を洗浄する労力は並大抵ではありません。導入後も専従で作業員を雇用しなければならず、苦労はつきません。「それでも『できることはやろう』と、生産者同士で話し合い、洗浄を決めました」(飯泉さん)。

残る課題は不足する原木確保 「原発なければ」無念にじむ

原木しいたけ生産者は、もう1つ、懸案を抱えています。それは、原木の確保です。原発事故前、全国で流通するしいたけ生産用原木のおよそ半数が福島県産でした。生産者の間では、原木の調達が喫緊の課題となっています。JAつくば市谷田部では通常、45万本の原木を使用していましたが、2012年は6割程度の28万本しか確保できませんでした。「県内の生産者のなかには鳥取県からわざわざ取り寄せたという話も聞きます」と佐野さんは教えてくれました。

JAつくば市谷田部では2008年から、パルシステムの仲介で産直産地の岩手県軽米町と原木の取引を行っています。この数年は年間3万本を取引していましたが、需要の高まりから2万本を調達するのがやっとでした。

しかも、これまでのように原木の太さは一定ではありません。木に合わせた栽培管理も必要で「ある程度の予測はできますが、育つ早さや収穫量など育ち方についていまはまったく分かりません」と飯泉さんは心配を隠しません。「原木の確保は今後10年、20年かかる問題です。福島も、除染の手法を確立しなければ、手付かずとなり、森林を保全する地域のしくみが崩壊してしまう。そうなったら、もう元には戻せません」。

里山を守り、原木栽培を守る意味でも、森での放射能除染は必要不可欠です。これは民間レベルでできる規模ではありません。「原発事故さえなければ、こんな余計な心配も苦労もしないでおいしいしいたけ作りに専念できたのですが」と、吉葉さんは無念そうに語ります。

それでも、生産者のみなさんが対策を重ねることで、放射能の心配をすることなくしいたけ生産ができるようになってきました。これからきのこがおいしくなる季節。生産者の苦労もかみしめながら、おいしい原木しいたけを味わってはいかがでしょうか。

JAつくば市谷田部の原木しいたけ放射能対策
原木の洗浄 管理の徹底
ほだ木の1本1本を、専用の高圧洗浄機にかけて洗浄。
すべてのほだ木に印をつけ、トレースを可能にしています。
<しいたけの放射能検査について>
8月7日の放射能自主検査で29ベクレル検出。9月6日の検査では17ベクレル検出でした。引き続き検査を行っていきます。
(パルシステムの独自ガイドライン 100ベクレル/kg)

*本ページの内容は2012年9月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。

目次へ
第81回へ
第83回へ
このページの上へ戻る