第111回 福島第一原発事故から6年――。変化に応じて多角的な対策を推進

産直産地「日本の稲作を守る会」(栃木県)では、なたねを植えて放射性セシウムを吸収させる(4月1回配付の『パルシステム放射能レポート』で取り組みの詳細を報告)
▲産直産地「日本の稲作を守る会」(栃木県)では、なたねを植えて放射性セシウムを吸収させる(4月1回配付の『パルシステム放射能レポート』で取り組みの詳細を報告)

歳月の経過で変わりゆく
課題や不安に向き合う

▲2017年2月1回の『パルシステム放射能レポート』(月1回・希望者への配付)※5月1回は全組合員配付

2011年3月の福島第一原発事故から6年。各方面でさまざまな努力が重ねられ、食品中の放射能低減などの取り組みは成果が出てきました。しかし、放射能汚染による問題は時間とともに変化し、新たな課題も露呈しています。

食やくらしの安心安全という面では、事故直後の農産物への放射性物質の付着からはじまり、土壌汚染、長期的には果樹や水産物への影響と、注視すべき点が移ってきました。また、社会に目を向ければ、2017年3月を期限とする福島県からの自主避難者への住宅無償提供の打ち切りのような問題も起こっています。

そして、記憶に新しいのは2016年11月に報道された、避難している子どもたちを「菌」と呼ぶなどの原発避難いじめの発覚です。ほかにも2014年に大学の授業中、講師に出身地を聞かれた女子学生が「福島」と答えると、講師は教室の電気を消し「放射能を浴びているから光ると思った」など心ない言動をしていたことが今年になってわかりました。放射能に対する偏見は根強いことが浮き彫りとなり、あらためて正しい知識や情報を発信していくことの重要性を認識する事件でした。

こうした状況を背景に、昨年12月にパルシステムの放射能対策の新媒体として発行が始まったのが『パルシステム放射能レポート』です。放射能検査の結果をデータ中心に広報するところから一歩踏み込み、パルシステムの放射能対策を社会的、科学的な視点から、放射性物質への対応のしかたまで伝えていくことをめざしています。

客観データの提供を軸に
組合員と産地をサポート

▲パルシステム商品検査センターではゲルマニウム半導体検出器により放射線を精密測定

パルシステムでは今年2月、オンラインパル利用者を対象に、放射能検査についてのアンケートを実施しました。「放射能は気になる」と答えたのは半数以上(回答847人中)。「パルシステム商品を全般的に安心している」人は約半数、「製造地や産地によっては利用できない」と考える人も16.6%でした。一方、「パルシステムの放射能対策で評価できること」として、次のような声をいただきました。

●パルシステムの放射能対策への評価

  • ①継続的に放射能検査を実施 70.6%
  • ②低減の取り組み 52.3%
  • ③検出結果をwebで公表 50.2%
  • ④乳幼児用食品の検出下限値が1ベクレル 43.1%
  • ⑤『放射能関係のお知らせ』で広報 41.4%
  • ⑥『パルシステム放射能レポート』で広報 34.6%

「継続的な放射能検査」は、組合員が安心して商品を注文できるよう、また産地による放射能低減の成果を客観的な数値で判断し伝えるために、精度の高い「ゲルマニウム半導体検出器」を使い、多品目の食品を対象に実施しています。

この検査を担当する職員で、2児の母の宮本憲枝さんは、「“子どもたちに汚染のないものを”と思うと、産地の低減努力や自主検査などを行っているパルシステム商品は安心と実感します。組合員にもそう感じてもらえたらと思います」と話します。

パルシステムでは、「放射能(放射線)の健康影響には“しきい値”(これ以下なら安全という限度)がない」ことを前提に、国の基準より厳しい独自基準で検査するため、まれに微量の放射性物質が検出される商品もありますが、結果はすべて公開。それを受けた産地では、たとえば「なたねを稲刈り後の水田に植えることで放射性セシウムを吸収させる」といった環境に負荷をかけない地道な工夫などを通して、放射能を低減させる努力を懸命に続けています。

一方、行政の検査は80%(2016年度)が簡易な方法で行われており、精度が比較的低い、検査対象に偏りがあるなどの問題があります。さらに、検出が続いているにもかかわらず、経年的に全体の検出率が低下してきたことや多額の費用がかかっていることを理由に、検査の縮小も検討されています。

一過性にできない問題
多角的に対策や支援を

▲パルシステム東京による甲状腺検診の様子

パルシステムによる継続的な放射能対策は、検査や広報だけではありません。放射能による実害や風評被害を受けた産直産地の復興を「地域づくり基金」により支援したり、被災地の組合員のための保養制度を充実させたりしています。

さらに近年、会員生協で広がりつつあるのが甲状腺検診です。チェルノブイリ原発事故では放出された放射性ヨウ素が原因で子どもの甲状腺がんが増加しましたが、福島県でも原発事故のあった2011年から2017年2月までの検診で185人にがんが疑われ、手術を受けた145人ががんと診断されています。国による公的な検診が行われないなか、見えない放射能に対する組合員からの不安にこたえる検診は、今年、神奈川、東京、千葉、群馬で実施されました。

「原発事故後を生きる私たちにとって、放射性物質は、日々、対処していかねばならない有害物質。まずは偏りのない情報を得て、それを読みとく術を身につけること。そして、その知恵を子どもたちに伝えていくことが大切です。希望登録制で配付している『パルシステム放射能レポート』のことを知らない組合員も多いので、ぜひ登録して読んでいただきたいです」(パルシステム連合会 広報・商品活動課 大武 智恵さん)。

一過性にできない放射能汚染への対策。客観的なデータを蓄積し、放射能低減の努力を産地応援しながら続け、多角的に情報を発信すること。そして、組合員や産地の不安を軽減する支援をすること。パルシステムの果たすべき役割はまだまだあります。

※ご希望の方に毎月1回『パルシステム放射能レポート』を配布しています(注文番号:190888)。

※『パルシステム放射能レポート』は事業ページの「お知らせ」からもご覧いただけます。
https://information.pal-system.co.jp/tag/radioactivity-inspection/

*本ページの内容は2017年4月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。

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