第100回 パルシステム東京 大田センター 中学生を対象とした学習支援活動開始

パルシステムの震災復興支援
▲パソコン教材を使い、熱心に勉強する子どもたち

小中生の3割が支援の対象
「勉強したい」を応援したい

月曜夜になると、パルシステム東京大田センターへ、中学生が入っていきます。昼休みに職員が食事をとりながら歓談するスペースでは、子どもたちが熱心に勉強を教わっていました。教えているのは、地元ボランティアのみなさん。「ここではありませんが、最年長は85歳、20歳代の人も多く参加しています」と、NPOユースコミュニティーの濱住邦彦代表理事は話します。

2014年10月から始まった大田センターの学習支援活動の対象は、都や区から生活保護や就学援助を受けている家庭の子どもたちです。就学援助とは、生活保護対象ではないものの、給食費や副教材費を負担できるだけの収入がなく、それらの支払いを免除されている制度です。いま、大田区では、公立小中学校に通う子どもたちの3割、40人学級の10人以上が、どちらかの制度を利用しているそうです。

生活ぎりぎりの収入しかない家庭であれば、子どもを塾に通わせることなどできません。欧米では、(大学も含めた)教育関連費が無料もしくは非常に安価。一方日本では、個々の家計が負担している現状です。保護者がアクシデントに遭遇した場合、子どもの学習環境の制限が危惧されます。構造的な不況にある日本で、この問題が社会問題として浮上してきています。学習したくてもその機会を与えられず、学力が充分でないまま育った子どもは、安定して生活できる収入を得られる職業に就く可能性を低下させていきます。収入を得にくい親の子が、成長すると同じ境遇に陥ってしまう。これが、最近の報道などにある「貧困の連鎖」です。

そこでNPOユースコミュニティーでは、2008年からこうした子どもたちの学習支援活動をスタートさせました。「実は、東京都には塾に通う費用を補助する制度もあります。中学1年生の場合、年間5万円なのですが、これでは通年で通わせることができません」と濱住さんは言います。そのためか、市民の認知度も低く、大田区で活用されているのは予算の3割程度しかないそうです。

一般の塾に負けたくない
あえてこだわる「民間の施設」

現在、NPOユースコミュニティーでは、区内において大田センターを含め4カ所で学習支援活動に取り組んでいます。その場所は、大田センターのような事業所の会議室だけでなく、カフェや障がい者就労施設などさまざま。「開始当初は、地域の図書館などで実施していましたが、いまは民間の施設を利用させてもらうことにこだわっています」(濱住さん)。その理由は、子どもたちの「プライド」にありました。

高校進学を控える中学生にとって、塾へ通うことはいまや普通のことになっています。子どもにとって、通う塾もひとつのブランドだそうで、「どこの塾へ通っているか」ということが、自分のステータスのひとつでもあるそうです。「そんななかで『図書館に行っている』なんて、言えませんよね。だから、民間施設を利用させてもらい、塾の名前も『自由塾』と付けました。普通の塾に負けない教材を揃え、支援制度を受けていない家庭の子どもも通いたくなるくらいの塾をめざしています」。

教材は、教材メーカー各社の協力を受け、一般の塾が使用しているものと同じものを使用しています。パソコン教材もあり、子どもたちは一般価格よりも安価で学習することが可能です。教師はボランティアが中心ですが、元教師や、英語が堪能な外資系企業の社員などが参加しており、「できることを分け合って教えていく」ことを実現しています。

それでも「最後はどれだけ子どもと信頼関係を築けるかにかかっています」と濱住さんは語気を強めます。「いくら教材を揃えても、教師が有能でも、子どもに学習意欲がなければそもそも来てくれません。『この人のところなら、行ってもいいな』と受け止められる関係をつくるしかありませんね」(濱住さん)。

きっかけは助成金制度
「活動長制度」も後押し

▲NPOユースコミュニティーの濱住代表理事(写真左)と南活動長

大田センターとの連携のきっかけは2012年、13年のパルシステム東京が行っている「市民活動助成基金制度」(※1)でした。またパルシステム東京は2013年から、地域と連携した課題解決を目的に各配送センターへ活動長を配置し、運用を開始しました。当初から同センターで活動長を務める南浩一さん(※2)は「事業と活動・運動をつないでいくことを模索しているとき、制度が縁で知り合った濱住さんから学習支援活動を持ちかけられました。どこかの居酒屋ではありませんが、『はい、よろこんで』と引き受けました」と話します。学習支援活動の開始にあたっては、パルシステム東京のスタートアップ支援制度が活用されています。

そのほか同センターでは、社会福祉法人と連携した車いすの貸し出しや、配送を通じた見守り活動などに取り組んでいます。南さんは、「最終的にパルシステムの事業につながって、どちらもウィンウィンの関係になれば最高です。でも、それ以前に、まずは地域との関係づくりを深めていくことですね」と抱負を語りました。

センターで働く職員への好影響も、南さんは狙っています。「興味を持ってもらえれば、生協が社会的な役割を果たす意味など感じてもらえると思っています。始まったばかりで、職員の反応はまだあまりありませんが、助け合いの組織という実感を得てほしいと思っています」。

※1 組合員が商品やサービスを利用することで生まれた剰余金を原資とし、よりよい社会と地球環境をめざす市民活動を資金面で支援するしくみ。
※2 2015年4月よりパルシステム東京 江戸川センター活動長。

*本ページの内容は2015年2月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。 あらかじめご了承ください。

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