遺伝子組み換え政策で農水省、食品安全委へ意見書 安全性と環境影響への評価が不十分です

2014年4月8日

パルシステム連合会は4月7日(月)、遺伝子組み換え作物に関する政策に対し、農林水産省と食品安全委員会へ意見書(パブリックコメント)を提出しました。人体や環境への影響に対する評価が十分できていない遺伝子組み換え作物の利用に反対します。

遺伝子組み換え(GMO)作物は、南北アメリカ大陸諸国を中心に年々栽培面積が広がっています。GMO作物は、ある種類の除草剤に対し耐性を持つよう遺伝子を操作されるため、除草剤を使用しても作物だけは影響を受けずに収穫できるようになっています。

近年、これらの産地でGMO作物に使用する除草剤「グリホサート(ラウンドアップ)」に耐性を持つ雑草が発生しています。関連企業では、これらの雑草を駆除するため、ベトナム戦争で枯葉剤としても用いられた除草剤「2,4-D」に耐性のある作物品種が開発されています。

このたび、農林水産省の遺伝子組み換え作物の野外栽培などに関する許可と、食品安全委員会の遺伝子組み換え大豆に対する食品安全性評価のそれぞれの案に対し、パブリックコメントが募集されました。これを受け、パルシステム連合会では、食の安全性と環境保全を確保する立場から、GMO作物の国内での使用にあらためて反対する意見を表明しました。

【意見要旨】

  1. 十分な安全性確認・環境影響評価ができていない遺伝子組み換え作物の利用に反対します。
  2. 栽培種、外来種を含む全ての生物に対する環境影響評価を要望します。
  3. 問題を指摘する報告の精査、長期毒性試験の義務付けなど、十分な安全性の評価を要望します。
  4. 2,4-Dの利用拡大につながる品種の許可に反対します。

提出したパブリックコメント全文は以下の通りです。

※パブリックコメントは、国の行政機関などが新たな政策や規則などを定める際に、国民から広く意見を募集する手続きのことです。

農林水産省「遺伝子組換えセイヨウナタネ、トウモロコシ及びワタの第一種使用等に関する審査結果についての意見・情報の募集について」

2014年4月7日
農林水産省 御中
パルシステム生活協同組合連合会
代表理事 理事長 山本 伸司

遺伝子組み換えの技術は、作出の過程から不確実性に頼り、安全性は国民が十分に納得できるような評価がされておらず、環境に対する影響の評価も不十分で、不完全な技術であると私たちは捉えています。東日本大震災と福島第一原発事故という未曽有の災害を東日本の農業がこうむっている中でも、淡々と原発と同様に「不完全な技術」から作製された作物の栽培と食用が許可され続けたことは大変遺憾です。そして今、枯葉剤の成分として知られる除草剤2,4-Dを使う品種に許可が与えられようとしていることに、私たちは大変驚いています。私たちは「除草剤アリルオキシアルカノエート系及びグルホシネート耐性ワタ」をはじめ、すべての遺伝子組み換え作物の許可に反対します。

(1)十分な安全性確認・環境影響評価ができていない遺伝子組み換え作物の利用に反対します。

遺伝子組み換え技術が、その開発は多分に偶然性に頼り、化学物質と同様の安全性確認は行なわれず、「実質的同等性」の審査で許可されている現状に、私たちは大きな懸念を持っています。環境影響評価も不十分であると私たちは考えています。安全性の確認、環境影響の評価が不十分といわざるをえない遺伝子組み換え作物の実用化に反対します。

(2)栽培種、外来種を含む全ての生物に対する環境影響評価を要望します。

交雑性が野生植物のみに対して評価されていますが、栽培種や外来種の雑草等を含めた評価が必要です。遺伝子の拡散に関して、十分な評価を要望します。未だ国内では商業栽培はされていませんが、こぼれた種によるものと考えられる組み換え品種の野生化が起きています。拡散した場合、その修復は困難であり取り返しがつかない環境影響を危惧しています。次世代に日本本来の自然豊かな環境を継承するため、慎重な審査を要望します。
また、収穫後に植物体の一部はすきこまれるので、土壌微生物、昆虫等への影響の評価を含め、生態系全ての影響を評価するよう要望します。

(3)2,4-Dの利用拡大につながる品種の許可に反対します。

代表的なアリルオキシアルカノエート系除草剤である2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)は発癌性や催奇形性などが報告されています。かつて問題になった不純物のダイオキシン類は低減されたと言われていますが、2,4-Dの使用量増加に伴って不純物の多い輸入農薬が使用されることも十分に想定されます。そのため、2,4-Dの利用拡大につながる品種の許可に反対します。グリホサート耐性の雑草の出現が、このような新品種の開発につながっていると考えますが、また新たな耐性のある雑草が出現して、さらに強い農薬を使わなければならなくなることは自明です。こうしたことは、やめるべきだと考えます。また、「環境保全型農業」推進のためにも、強い農薬の使用を前提とした品種の許可には反対します。

食品安全委員会「除草剤アリルオキシアルカノエート系及びグルホシネート耐性ダイズ68416 系統に係る食品健康影響評価に関する審議結果(案)についての意見・情報の募集について」

2014年4月7日
食品安全委員会 御中
パルシステム生活協同組合連合会
代表理事 理事長 山本 伸司

遺伝子組み換えの技術は、作出の過程から不確実性に頼り、安全性は国民が十分に納得できるような評価がされておらず、環境に対する影響の評価も不十分で、不完全な技術であると私たちは捉えています。東日本大震災と福島第一原発事故という未曽有の災害を東日本の農業がこうむっている中でも、淡々と原発と同様に「不完全な技術」から作製された作物の栽培と食用が許可され続けたことは大変遺憾です。そして今、枯葉剤の成分として知られる除草剤2,4-Dを使う品種に許可が与えられようとしていることに、私たちは大変驚いています。私たちは「除草剤アリルオキシアルカノエート系及びグルホシネート耐性ダイズ」をはじめ、すべての遺伝子組み換え作物の許可に反対します。

(1)十分な安全性が確認できていない遺伝子組み換え作物の利用に反対します。

遺伝子組み換え技術が、その開発は多分に偶然性に頼り、化学物質と同様の安全性確認は行なわれず、「実質的同等性」の審査で許可されている現状に、私たちは大きな懸念を持っています。環境影響評価も不十分であると私たちは考えています。安全性の確認、環境影響の評価が不十分といわざるをえない遺伝子組み換え作物の実用化に反対します。

(2)問題を指摘する報告の精査、長期毒性試験の義務付けなど、十分な安全性の評価を要望します。

  • いくつかの研究で長期毒性試験により遺伝子組み換え作物に毒性があった報告されています。研究の手法等に不十分点を指摘する批判があることは承知しておりますが、それだけでは安全の証明にはなりません。再試を実施して、安全性を確認することを要望します。
  • 遺伝子組み換え作物の安全性は「実質的同等性」の評価しか行なわれていません。長期毒性試験によって遺伝子組み換え作物の安全性が十分に確認できるとは考えられませんが、必要最低限の安全性確認として、長期毒性試験を義務付けることを要望します。
  • 評価書には宿主との差異に関する事項の記載がありますが、主要栄養成分と既知の有害成分だけの評価です。作物を作る過程で傷つけられた休眠遺伝子等によって、微量でも有害性の高い未知物質が生成する可能性について、どのように評価されたのか、質問いたします。
  • 評価報告には、いくつかの成分について対照と統計学的有意差が認められたことが記載されています。多様性のある種内での比較は適切ではなく、遺伝子に何らかの変化があると考えられますので、再評価を要望します。

(3)2,4-Dの利用拡大につながる品種の許可に反対します。

代表的なアリルオキシアルカノエート系除草剤である2,4-D(2,4-ジクロロフェノキシ酢酸)は発癌性や催奇形性などが報告されています。かつて問題になった不純物のダイオキシン類は低減されたと言われていますが、2,4-Dの使用量増加に伴って不純物の多い輸入農薬が使用されることも十分に想定されます。そのため、2,4-Dの利用拡大につながる品種の許可に反対します。グリホサート耐性の雑草の出現が、このような新品種の開発につながっていると考えますが、また新たな耐性のある雑草が出現して、さらに強い農薬を使わなければならなくなることは自明です。こうしたことは止めるべきだと考えます。また、「環境保全型農業」推進のためにも、強い農薬の使用を前提とした品種の許可には、反対します。