パルシステム 農薬ポジティブリスト制度

報告をする高橋事業部長 2006年1月19日、パルシステム第13回農法研究会、第8回環境保全型農業推進会議全体会報告会が開催されました。会場では、農薬ポジティブリスト制度における産直産地への対策要請についてジーピーエス 高橋宏通 事業部長から報告がありました。

写真:報告をする高橋事業部長

『生産者にお願いする14項目の対策事項は以下の通りです。』
”農産物の農薬等のリスクを軽減するためには、まず生産者一人一人の正しい認識とリスク管理が前提となります”

 農薬ポジティブリスト制度とは
 =安全・安心な農産物をつくり出荷するために=

農薬ポジティブリスト制度とは、農薬残留が基準値以上を超えた農産物、食品の流通を禁止する制度です。適用のある農薬より、適用のない農薬などの基準(一律基準=0.01ppm)が厳しくなっています。

農薬の残留リスクを少なくするためには
  1. 農薬の使用を削減する
  2. 農薬の飛散防止を行う
  3. 農薬適正使用に努める
  4. 汚染防止策を行う

 食品安全行政、ポジティブリスト制への対応について(資料より)

 2003年に改正された農薬取締法は、使用者への罰則が適用されるなど農業生産現場への規制強化となりました。さらに食品安全基本法制定を受け、2005年食品衛生法が改正され、農薬のポジティブリスト制の導入、食品安全委員会による監視体制、トレサビリティの法制化など、食糧・農業に対する規制はますます強化されています。行政の取締り監視体制が強化され、摘発対象が増加する傾向は否めない状況で、生産〜流通・加工〜販売プロセスの改善と管理レベルの高度化が求められます。また、農薬のポジティブリスト制は平成18年5月までに、全ての農薬について基準が設定され違反は流通が禁止される。輸入農産物には国内の農薬取締法の規制は適用されず、国内の禁止農薬についても規制はありません。食のグローバル化の中で、国内農業と外国農産物の管理状況のアンバランスは増大していきます。食品に対する検査体制は強化される傾向で、検査を行えば行うほど今まで見えてこなかったことが明らかになってきます。

1、2006年ポジティブリスト制度の問題点について

 2006年5月に施行されるポジティブリスト制度の暫定基準が2005年6月30日に発表された。

「一律基準」について「国内登録」がなく「コーデックス基準」も「外国(での)基準」もないものにはFAO/WHO等がADIを考慮した許容量の目安として1.5μg/dayを用いるとして、欧州連合食品科学委員会にならって「0.01ppm」を機械的に採用した。いくつか「案」が検討された中で最も低い数値を採用された。
しかし、以下のような問題点があると考えられる。

  1. 農産物の安全性を高める取り組みについて
    農産物の農薬等のリスクを軽減するためには、まず、産地、生産者段階での正しい認識とリスク管理が前提となるが、現行のポジティブリスト制度については農薬使用者である産地、生産者にはほとんど情報が伝わっておらず、また理解しにくいものとなっている。現行のポジティブリスト制度については農薬使用者である産地、生産者が理解できる内容であることが必要不可欠で、農薬等のリスクをきちんと公開し周知徹底することが重要である。
  2. 農業の生産実態を充分に踏まえていない制度であること
    日本では非常に狭い国土で小規模農家が農業を営んでおり、混植が多く飛散、土壌残留、などのリスクが非常に高い。国内農業者が充分の実践できる方策がないまま基準値による法規制が進められている。国内農業者は「農薬取締法」と「食品衛生法」の二つの法規制を受けるが、海外農産物は「食品衛生法」のみの規制となり、農薬取締法の規制は受けていない。国内生産者の不利益が増大し、輸入農産物の増加に拍車がかかることが懸念される。
  3. 検査制度の充実と法規制の担保について
    ポジティブリスト制度による規制対象は全ての食品となっているが、残留基準値を計測する手段は農薬検査以外になく、現状の農薬検査体制では非常に不十分であると危惧される。極一部のもののみ検査を行い、たまたま引っかかったものを規制し、他の多くの検査していないものを「可」とする立場であれば食品の安全性確保になりえず、消費者に多くの誤解を生む。現状では民間の検査センターで基準値以上の値が検出されても回収措置などは講じることはできない。今後、公定法検査と民間検査センターの位置付けについて整理が必要となる。

2、2006年5月(ポジティブリスト制施行後)以降想定される状況

  1. 農薬検査を行えば行うほどいままで見えなかったことが見えてくる、食品の回収措置が多くなる。
  2. ダイオキシン報道のように、検査センターへの検査依頼が集中する。また、輸入の検疫処理なども時間が非常にかかる。
  3. 加工品原料などでは、検出された場合、メーカー、小売が産地に対して損害賠償などを請求する事 態が発生する。
  4. 外国の農産物にくらべて、国内農産物の方が農薬については管理が厳しいことがあきらかになる。 厚生労働省、農水省は食の安全性への信頼感を高めるために実施するのだが、回収措置の乱発は結果的に消費者への食への不安感をあおることになるのではないか。

3、パルシステムの対応について

短期的な課題として2006年1月〜6月にむけて以下のことを実施します。
  1. 農薬の残留のリスクを低める近道は「農薬を使用しないこと、削減すること」あらためて農薬削減プログラムの実践とその評価を行います
    ⇒パルシステムでは農薬削減プログラムにより、基準値の1/10以下の目標に管理しています。
  2. 産地、生産者段階での正しい認識とリスク管理が前提となるため、生産者向けの学習会を各地で開催します。特に重要拠点産地を定めて地域ごとに合同で学習会の開催を実施します。
  3. 農薬飛散防止策、適正使用、圃場管理、などについて産地向けの注意指導文書を作成し全産地に広報を行います。
    中長期的課題として以下のこと実施します。
  4. 空中散布については廃止をもとめ、地上防除に切り替えていただくよう要請を行います。
    ◆どうしても廃止できない地域については、パルシステムの生産者のいる地域などを除外していただきます。
    ◆エコチャレンジ米の団地化などをはかり除外地域を広げていただきます。空中散布に使用する農薬について、パルシステムの優先排除農薬等の使用をやめていただく方向で要請します。
    ◆いもち病、カメムシ対策などについて、空中散布の効果を検証し、農薬に代わる技術を推進していただきます。
    ◆未廃止地区の重点産地を定め行政、地域への働きかけなどアクションを行っていきます。
  5. 輸入農産物についても、国内の農薬取締法での禁止農薬の不使用をクリアしたものを扱っています。バナナ、キウイ、グレープフルーツ
  6. 他に2006年度より「外来生物規正法」が施行されます。 国内生態系保護にむけて外来生物の使用が規制される。国内トマト農家(マルハナバチ)の使用について大きく影響を受ける。パルシステムでは「国産マルハナバチ(黒マルハナバチ)の導入実験」を他産地に先駆けて実験を実施しています。パルシステムでは環境にも、生態系にもやさしい農業を目指していることをあらためて確認し推進していきます。

4、その他(農薬取締法関係 事故事例)

事故事例を検証し、今後の栽培管理について強化してください。

事例1
 <大葉> 前々作のほうれん草でヨトウ虫が大発生。殺虫剤を散布しその後ほうれん草は全てうなってしまった。その後土中残留で大葉に適用がない農薬が微量検出した。
 ⇒農薬は土中残留します。前作や前々策の影響があることを考慮して使用してください。土中に作物をすき込む事はできるだけ避けてください。

事例2
 <米>  立ち枯れ病が発生したため、籾消毒で登録のある農薬(ベンレート)を苗消毒材として使用した。
 ⇒たとえ登録の有る農薬であっても使用法について非常に紛らわしいので注意してください。

事例3
 <小松菜> ナメクジが発生したため、ハウスの隅に仕切りを設けて誘引殺虫剤を散布した。散布方法が悪く小松菜に飛散した。誘引殺虫剤は小松菜に適用がない。
 ⇒飛散防止策、散布方法を充分に行ってください。仕切りを設けたにせよ、使用する場合は小松菜に適用があるものを使用してください。

事例4
 <葉物>  適用のない農薬が残留検査で検出された。対象の農薬は樹木用の殺虫剤で、生産者は家庭の樹木の防除を行ったあとに、薬剤散布機の洗浄をせずに小松菜の防除を行った。
 ⇒機械、器具の洗浄の徹底とその記録をつけてください。

事例5
 <人参、きゅうり等>  ドリン剤が微量検出した。ドリン剤が国内で失効された農薬。対象の生産者は使用していないし所持もしていない。対象の農薬は30年以上まえにその地域で使用されていた。
 ⇒土中の残留農薬検査など調査をおこなってください。(パルシステムで協力します。)リスクが高い場合には事前に農薬検査をしてから出荷するようにしてください。

事例6
 <枝豆>  8月収穫予定の枝豆でカメムシ対策に6月に殺虫剤を使用した。殺虫剤の使用時期は収穫前30日であった。ところが、成育がはやまり7月に収穫した。
 ⇒農作物は成育が前進する場合があることを考慮して余裕のある休薬期間を設定してください。また、生産者の栽培記録を出荷まえにチェックしてください。

事例7
 <柑橘類>  使用していない農薬が検出された。レモンにみかんなどで使用した農薬が検出された。
 ⇒近隣の圃場からの飛散防止策を充分に行ってください。混植は基本的に避けてください。止むをえない場合は、柑橘類で共通登録のある農薬を、最初の収穫物の適用期間にあわせて使用するようにしてください。また、近隣の農家と相談し、飛散させない、飛散しないようお願いしてください。JAによっては飛散させない誓約書などとっている場合があります。

事例8
 <米 野菜> 使用していない農薬が検出された。調査したら空中散布で使用していた農薬であった。
 ⇒空中散布については基本的に飛散が有ることを前提に、農薬取締法の遵守を行政に働きかけていきましょう。また、米の空中散布地域については薬剤も記帳するようにしてください。野菜などに飛散の可能性あったと思ったら事前に農薬検査などをしてから出荷するようにしてください。

事例9
 <野菜> 使用していない農薬が検出された。調査をしたら用水中に残留農薬があった。上流地区で柑橘の防除が行われていた。
 ⇒使用する用水についても残留のリスクがある場合、農薬検査を実施してください。(パルシステムで協力します。)また、河川の汚濁防止は農薬使用者の遵守事項ですので地域の生産者、行政にはたらきかけていきましょう。

事例10
 <きのこ> 農薬を使用していないのに殺虫剤が微量検出された。調査をしたら、室内消毒で使用したものであった。
 ⇒基本的に室内消毒などは避けてください。衛生管理などで、室内消毒が必要なばあい、商品が汚染されないよう充分に配慮してください。消毒後、施設使用する場合充分に期間をとってください。防虫防鼠対策も同様です。

5、最後に  

これまでは農薬をできるだけ使用しない(総量削減、毒性の強い農薬を排除)運動を農薬削減プログラムですすめてきました。 これからは農薬を減らしてつくった作物を農薬の汚染、飛散から守ることをあわせて行っていくことが重要となります。

農産物の農薬等のリスクを軽減するためには、まず、生産者一人一人の正しい認識とリスク管理が前提となります。

    (1)農薬の飛散防止策を講じましょう。

  1. 近隣の農家にたいして飛散防止を呼びかけていきましょう。
  2. 飛散防止の緩衝地帯の検討しましょう。
  3. 飛散があったと思われる場合は事前の農薬検査を行いましょう。
  4. (2)本人飛散も注意しましょう。

  5. 畝、畔などの除草剤使用は本圃にかからないように注意しましょう。
  6. 農薬の機械、器具などの洗浄を徹底しましょう。
  7. 野菜や果樹の混植はさけてください。
  8. 農薬を使用する場合、風向き、風力、などを考慮して行いましょう。
  9. SSなどの散布方法を見直しましょう。
  10. 余った農薬の処理などを適正にお願いします。
  11. (3)農薬の適正使用、管理を強化しましょう。

  12. 休薬期間や希釈倍率は基準ギリギリではなく余裕のある設定をしましょう。
  13. 生産者の記録を出荷前にチェックし適合、不適合を判断するようにしましょう。
  14. (4)土、水なども農薬汚染から守りましょう。

  15. 土中残留、水質の汚染などについて検査をおこないましょう。
  16. 室内消毒、作業場所、選果機、乾燥機などの洗浄についても農作物への汚染がないよう注意しましょう。
  17. 他の作物や慣行栽培品との区分管理を徹底しましょう。

パルシステムでは農薬削減プログラム推進のため農薬検査センターを持っています。飛散などのリスク検査、土壌検査、水質検査などをおこないたい生産者、産地は積極的に相談してください。希望により協力させていただきます。 農薬、法令について学習会、研修会を開催したい産地がありましたらジーピーエスで積極的に協力させていただきます。


 「生産者へのお願い」

 ポイントだけお話いたします。ひとつは使った農薬については残留しないようにすることです。 他から飛散され、汚染された農地については、とても厳しい基準0.01ppmという制度により出荷できなくなる場合があります。 私たちは農薬削減プログラムを計画し実行しているわけですが、それでも飛散などによって微量に出る場合があります。 ポジティブリスト制への対応は産地で生産者一人一人が正しく認識して取り組まなければいけないと思います。 そして、地域の生産者に協力と理解を伝える事も必要です。
 地域での学習会についてはご要望などがあれば申し出ていただければと思います。

 パルシステム産地では農薬を使わないということに対してはかなりのレベルまで到達しましたので、 今度は飛散の防止策を実行しましょう。難しい状況ではあると思いますが近隣の農家に飛散の防止を呼びかけていく必要があります。 自分たちの畑に農薬が飛んで来ないようにお願いすることは、ご近所での揉め事になるのではないかと不安に思われるかもしれませんが、 逆に回りの農家の方たちにも農薬削減に興味を持っていただくことも必要かと思います。 農産物や産地を守るためにも努力して行きましょう。

 もうひとつは、自分自身で飛散させないということです。 本人が飛散させてしまう事故が幾つかおきています。風向きなども検討し、飛散しやすい農機具は使わないなど徹底して頂けたらと思います。
 又、農薬は以前使用したものが土中などに残っている場合があります。 土壌なども検査して頂いて細かく状況を把握していただきたいと思います。 予想外に飛散してしまった場合ですが、 そういった場合は事前にご相談頂ければパルシステムの検査センターで検査をすることも可能ですので、 この様な場合もご協力させていただきます。 農家のかたがたにとっては大変な法制度になったと思いますが、こうした制度が出来たということを逆手にとってパルシステムの農産物は本当に安全で美味しいということを武器にしてがんばっていきたいと思いますのでよろしくお願いします。

ジーピーエス事業部長 高橋宏通



農業経営・食品市場新聞 「商経アドバイス」より 
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農薬削減、空中散布廃止をパルシステム生活協同組合連合会のポジティブリスト制対応 1月26日(木)発行
パル生協連合環境農業会議 "上越全域30%農薬減へ茨城では温湯消毒助成" 2月2日(木)発行

奈良新聞 「地域ぐるみで取り組みを」
(PDFファイル)
日本農業新聞「農薬正しく使って安全 生産履歴の記帳で安心」

パルニュース
第13回農法研究会並びに第8回環境保全型農業推進会議全体会を開催しました。
第13回農法研究会並びに第8回環境保全型農業推進会議全体会を開催します〔プレスリリース〕


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