Theme-3 「産直青果を考える」

生産者、消費者が互いの立場を理解し合い農薬の使用量を減らしていきます。

パルシステム生活協同組合連合会では、専門家や組合員参加のもと「禁止農薬タスク」を進めてきました。その一環として昨年『農薬削減プログラム』を策定。高温多湿な日本の気候風土のなかで、農薬に頼らない農業を現実的に可能にするために、具体的な一歩を踏み出しました。

◆「農薬削減プログラム」の考え方

「農薬の総量を減らす」ための第1ステップとして、優先的に排除すべき農薬をリストアップしました。

農薬削減プログラムによる「優先排除:問題農薬の不使用産地」私たちパルシステムは、組合員に安全な農産物を届けるため、農薬の使用量を減らしていくことを産直の前提としています。高温多湿の気候風土のなかで、病気を防ぎ収量を安定させるなど農薬の果たしてきた役割を認めながらも、できる限り農薬に頼らない栽培をめざす立場に立ちます。  その具体的な取り組みとして、『農薬削減プログラム』を策定。第1ステップとして、独自基準により作成した「農薬毒性評価基準一覧表」にリストアップされた農薬を、優先的に削減していきます。

プログラムを実効性のあるものにするためには、消費者の理解と生産者の自主的な取り組みが欠かせません。

生産者ボード現実の農業の場から農薬を減らすためには、生産者が農薬についての正しい知識と認識を持ち、削減に向けて自主的に取り組んでいくこと、そして「多少の虫食いや不揃いがあっても利用し続ける」など消費者側の理解が不可欠です。病虫害と闘いながら収量確保に努める産地の実状を把握しながら、農薬を減らすことのメリット、デメリットについて生産者と消費者とが共通の認識を持ち合うことで、このプログラムは初めて実効性のあるものとなります。

●私たちの「農薬削減プログラム」●
  1. 産地への農薬についての情報提供を積極的に行っていきます。
  2. 無農薬や減農薬による栽培実験を継続・拡大します。
  3. 産地間の技術交流や研修会を通して、全体のレベルアップをはかります。
  4. 個人ごと、圃場(畑)ごとに生協が栽培仕様を管理し、情報をオープンにします。
  5. 農薬残留検査を強化。残留が確認された場合はただちに改善を要請します。
  6. 生産者の負うリスクについて、共に考える場を設けます。

----------------------● プログラム1 ●----------------------

産地への農薬についての情報提供を積極的に行っていきます。

農薬の影響については、「安全なものを食べたい」という、消費者サイドのニーズから語られることが多いのですが、直接散布する生産者やその地域にとっての影響はきわめて大きいと思われます。パルシステムでは、産地生産者に対して説明会を開いたり、パンフレットを作成するなど、農薬を減らすことについて、お互いに基本的な認識を共有できるようにします。昨年8月には近郊産地の生産者を集めた研修会を開催。前向きな議論や情報交換が行われました。

----------------------● プログラム2 ●----------------------

無農薬や減農薬による栽培実験を継続・拡大します。

生産者現在、近郊主産地を中心とする65カ所の圃場で、無農薬や減農薬による栽培実験を実施。ここまで大きく農薬削減の実験に取り組んでいる例は、他生協の例をみてもほとんどありません。今後は作付け立ち会いや収穫検討会などへの組合員の参加を呼びかけるとともに、対象品目を増やしたり、減農薬も含めて実験を継続・拡大し、より現実的な農薬削減の方法を探っていきます。  茨城産直センターのトマト生産者・塙(はなわ)さんも、今年からハウスの一部で実験をスタート。「ハウスものは施設や温度管理などに費用がかかるから、失敗したときの被害が大きいのが不安ですが、ハウスのなかで農薬を噴霧しているのは私たち。薬を減らすことは、安全なものを届けるためだけではなく、自分たちの健康を考えても、目下の最大の課題です」(塙(はなわ)さん)。

無農薬実験の対象とし、産地も拡大。今年はトマトやきゅうり、
葉ものについても実験に取り組みます。
「これまでは近郊産地のさつまいもやごぼうなど根菜類について無農薬実験を行ってきましたが、今年度は対象品目を拡大。ハウスのきゅうり、トマトなど果菜類や小松菜、ほうれん草など葉菜類についても、農薬や土壌消毒剤を使わない実験を行う計画です。さらに、りんごについても実験を検討、対象産地も近郊から遠方へと広がりつつあります。ただし、果物の場合、年に一度しか収穫することができず、しかもその品目だけを専門につくっている生産者が多い。リスクが大きいので、慎重に実験を進めていく必要があるでしょう」((株)ジーピーエス・高橋)

----------------------● プログラム3 ●----------------------

産地間の技術交流や研修会を通して、全体のレベルアップをはかります。

トラクターに乗る生産者病気や虫の害が出やすい日本の気候風土のなかで、農薬に頼らずに作物を栽培するために、各産地では新しい栽培技術や天然資材についての情報収集や導入を積極的に進めています。すでに先進的に取り組んでいる産地も多いので、近郊産地会議や品目別の会議の場などで成功事例をオープンにし、パルシステムの産直産地として、知識と経験の共有化をはかっていきます。「以前は自分たちの産地のことだけ考えていたけれど、顔を合わせる機会が増えて、お互いにパルシステムの産地として協力して伸びていこうって気持ちが強くなりましたね」(塙さん)。

研修会を通して、「太陽熱殺菌」に着手。百聞は一見にしかず。
これからは産地同士、手を結ぶ時代。
昨年から、パルシステム近郊の人参産地では、「太陽熱」を使って土中の線虫や病原菌、雑草の種を駆除。土壌くんじょう剤や除草剤を使わない栽培に取り組んでいます。「つくば有研で5年以上前から取り組まれ、よい結果が出ているのを見て、昨年は他産地にも導入を呼びかけました」と(株)ジー・ピー・エスの高橋。各産地から40名ほどの生産者を集めて研修会や合宿を実施。マルチの張り方などを実体験し、習得した技術をそれぞれの畑に持ち帰りました。「太陽熱殺菌については知っていたけど、百聞は一見にしかず。現実の形を見て、納得した生産者が多かったようです」(佐原農産物供給センター・香取さん)。

----------------------● プログラム4 ●----------------------

個人ごと、圃場(畑)ごとに生協が栽培仕様を管理し、情報をオープンにします。

情報開示農薬の削減を実行するためには、産地のなかで農法や農薬使用について生産者同士の意志を1つにし、組合員、職員も含め、それについて納得しておくことが必要です。そのため今後、右のような取り組みを予定しています。

  1. 品目ごとに栽培管理者を決め、農薬使用や肥培管理において責任のある体制をつくります。
  2. 主要な産地を皮切りに、これまでの産地ごとの栽培内容が示されている『商品カード』に加え、個人別また畑別の『栽培管理記録』を導入し、農薬の使用や栽培作業についてパルシステムとして、より厳密に内容を把握し、管理できる体制をつくります。
  3. 1、2、の取り組みの実態を、組合員、生産者、職員にリアルタイムに伝えるため、各生協と通しての資料公開やパルシステムのホームページ(99年度中に開設予定)での情報公開を行います。

----------------------● プログラム5 ●----------------------

農薬残留検査を強化。残留が確認された場合はただちに改善を要請します。

これまで残留の可能性の高い時期や品目を中心に行ってきた農薬残留検査を強化。消費者に安全性を保証するとともに、生産者にとっても農薬削減の取り組みの指標となるように、『優先排除農薬』(前述、パルシステムの『農薬毒性評価基準一覧表』参照)に掲げられる対象農薬については、重点的に残留検査を実施します。残留が確認された場合、状況に応じて、出荷停止といった厳しい措置を取ることもあります。

----------------------● プログラム6 ●----------------------

個人ごと、圃場(畑)ごとに生協が栽培仕様を管理し、情報をオープンにします。

農薬を減らすという取り組みは、収量ダウンや生産コストの上昇などを伴うことが多く、より安全なものをお届けするために、場合によっては、価格アップや多少の虫食いも含めて供給せざるをえない、といった事態も起こり得ます。これからもパルシステムや産地の取り組みについては、『パル・マート』の誌面でも積極的に紹介していきます。生産者の負うリスクを少しでも軽減し、「安全な作物を求める」ことが、生産者への一方的な押しつけにならないために、何をしたらいいのか。いっしょに考えていきましょう。

◆信頼関係があるからこそのネットワーク

圃場産直産地では、『農薬削減プログラム』に沿い、農薬を使わない栽培実験を実施したり、農薬に代わる病害虫への効果的な対処法を模索するなどいくつもの方法で、リストアップされた農薬を少しでも減らそうと日々試行錯誤を繰り返しています。無農薬・減農薬による栽培実験を実施しているのは、近郊主産地を中心とする65カ所の圃場。これほどの規模で農薬削減の実験に取り組んでいる例は、全生協の中でも秀逸。今後は対象品目も増やし、生産者主導の実験に加え、大学の研究グループとタイアップして実験を進めていくなど、より現実的な農薬削減の方法を探っていく場にしていきます。  2001年度の取り組みのひとつは、害虫を食べてくれる虫をハウス内に放し、防除を行う「天敵農法」。茨城産直センター(茨城県)を中心にしたこの実験では、2000年、害虫オンシツコナジラミの天敵であるツヤコバチを放すことで、オンシツコナジラミが激減。今後の農薬削減に大きな効果が期待されています。

◆情報をリアルタイムに共有

賞状食の安全を確保し、「環境」に負担をかけず将来にわたって持続できる生産基盤を整えていこうというパルシステム生活共同組合連合会の産直事業に、社会的な評価が高まっています。2001年3月、全国環境保全型農業推進会議主催の「第6回環境保全型農業推進コンクール」では、パルシステム生活共同組合連合会(旧名称:パルシステム首都圏コープ事業連合)が「特別賞」を受賞。そして大賞の「農林水産大臣賞」に輝いた2つの産地、「優秀賞」の3つの産地が、いずれもパルシステム生活共同組合連合会関連の産直産地であるという快挙を成し、パルシステムの産直の水準の高さを示しました。  このコンクールは、各地域で環境に配慮した土作りや減農薬・減化学肥料栽培などに意欲的に取り組んでいる産地や組織を表彰し、その成果を世の中にアピールしようというもの。「農薬削減プログラム」に従ってのパルシステムとジーピーエスの地道な努力が行政レベルで認められ、同時に環境保全型農業への取り組みが、周辺の地域の意識も少しずつ変えてきていることを実感しています。

●大賞受賞/JA常磐村(青森県)、くらぶち草の会(群馬県)●優秀賞受賞/つくば市谷田部産直部会(茨城県)、長有研(長崎県)