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社会貢献活動レポート

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第56回 相談を通じ自立した消費者を育てる「くらしの相談ダイヤルの取り組み」


▲相談員の座席の後には、法律や社会マナーなどさまざまな資料が備えられています

2008年に世界を襲った金融危機は、パルシステムの組合員にも大きな影響を与えました。パルシステムの「くらしの相談ダイヤル」は、それをもっとも感じているところのひとつかもしれません。
「くらしの相談ダイヤル」は現在、パルシステム東京が週3回、ほかの会員生協は週1回、電話による相談を受け付けています。相談内容は、石けんの使い方や「帰省時のおみやげは、なににしたらいいか」などさまざまですが、2008年の夏ごろから多重債務をはじめ、生活費に困窮する相談が増えてきたそうです。「行政の相談窓口では、たて割りの業務分担や法的な規制もあって対応しきれない内容も少なくありません。その役割を担えるのはくらしに近い生協でしょう。『消費者相談』は、消費者が消費団体へ苦情を寄せたことから始まったのです」と相談員の村上扶實子(ふみこ)さんは話します。
生活や所得の格差が広がるなか、貧困の相談は、組合員のくらしの変化と社会のセンサーとしての役割も果たしています。

相談内容は帰省のおみやげから葬儀の仕方までさまざま

「くらしの相談ダイヤル」は現在、2名の消費生活相談員と1名のサポート相談員で相談を受けています。村上さんは、消費生活相談員としてだけでなく、大学講師やファイナンシャルプランナーなど幅広く活躍しています。

受け付けている電話相談の内容はさまざま。「行政には相談したくない近隣とのトラブルや、身内のトラブルについても相談がきます。『残暑見舞いはいつからいつまで』や『お香典はいくら包めばいいのか』『帰省のおみやげにはなにを持参すればいいのか』などさまざまな相談が寄せられます」(村上さん)。

なかには、親を亡くした独身の壮年男性が、法事をどうしたらいいのか分からず電話をかけてきたこともあったそうです。近所のつきあいが盛んだったころは『いまさら聞けない』なんていうことも気軽に教われる人がいました。しかし現在は、近隣との人付き合いが希薄になり、困ったことがあっても相談できる人がいません。村上さんは「悩みぬいて『だめもと』でくらしの相談ダイヤルへ電話をかけたと話す組合員もいます」と話します。

ただ、村上さんは「相手がパルシステムだから電話をかけてみようという気持ちになるのではないでしょうか」とも分析します。「パルシステムが提供するのは食材が中心です。食は生活の基本であり、信頼がなければ配達されてくる食品を食べることはできません。食を共通項にした信頼関係が相談者にとって身内のような意識となって相談が寄せられています。親戚以上の感覚かもしれませんね」。実際に相談を受けている村上さんの感想です。


世間の先入観とはかけ離れた多重債務者の深刻な実態

相談内容は、こうした誰でも解決できる内容だけではありません。とくに最近増えているのが、経済的に困窮した人からの相談です。「予兆が見えてきたのは、2007年8月に発生したパリバショック(※)です。失業やボーナスカットといった収入の減少から住宅ローンを返済できないという相談が増えてきました」。多重債務は、なんとかローン返済を返済しようと、ギャンブルや消費者金融に手を出し、さらに借金がかさんだ結果なのです。

「昔のように、ただギャンブルが好きでお金に困るということではありません。生活に追い詰められ、やむなく手を出し、さらに生活に困窮するというのが、多くの多重債務の実態なのです」。村上さんは、世間が多重債務者にもつ"自業自得"という先入観に疑問を呈します。こうした重大な案件が35%を占めるまで増加しているそうです。「現在(11月末時点)は、ボーナス前ということもあり『様子見』の状態です。今後年末、年度末に賃金カットが続けば、相談件数はさらに増加することが予想されます」。


相談業務は被害の救済と未然防止

また、相談する所を知らず、問題を抱えたままにしているケースもよく見られるそうです。

一定の収入や貯蓄がある人でも、リストラや病気によって収入が減ったとたん、生活苦に陥るケースがよくあります。「収入が減少すれば支出を抑えることは当たり前なのですが、つい以前と同じ消費を続けてしまい、生活に困るという悪循環が貧困を招いています。収入が減り、その範囲内で生活ができなくなったら赤字の原因を探すべきです」。

さらに生活者の自立についても課題を挙げます。「消費者としての意識がなければ、相談するという行動にもつながりません。世の中へ任せきりにするのではなく、自分で得た情報を受け止め、動けるような消費者になることも必要ではないでしょうか。その意味でパルシステムは自立した消費者になるための応援団だと考えます」。

相談員は、このような厳しさを持ちながらも、相談者に寄り添いながらいっしょに解決方法を考えています。その端的な例が、相談者へのフォロー体制です。くらしの相談ダイヤルでは、法律や制度が改正された場合、過去にさかのぼって該当する相談者を検索し、フォローの電話かけを行っています。情報のデータベースは、検索しやすいよう国民生活センターのデータベース方式を採用し、さらに独自の視点を加えています。「電話して『覚えてくれていてうれしい』といわれたときは、やはりうれしいですね。しかもそれが、生協へのロイヤリティにもつながると考えると、なおさらおろそかにはできません」。


くらしや社会のセンサーの役割相談業務にはメリットも

今年度くらしの相談ダイヤルで受ける相談件数は、前年より1カ月早いペースで増えています。事務局のパルシステム連合会運営室・志波早苗さんは「現在設定している週3回の相談日を今後増やす方向で考えないといけない時期にきています。相談件数が増えることは、パルシステムにとってもメリットのあることなのです」と話します。

相談件数が増えれば、その分データが蓄積され、解決能力が高まります。その実績は、行政へ要望を提出する際の裏付けとして後押しになります。さらに、相談の内容を分析すれば、社会の動向を見極める貴重なデータとなり、今後のパルシステムのあり方を考える上でほかにはないセンサーの役割を果たすことになります。

志波さんは「消費者運動が強くなれば消費者被害も少なくなります。相談業務やふだんからの意識啓発によって消費者被害を防ぐことは、社会全体を豊かにすることにもつながります」と話しました。


※1…
パリバショック=2007年8月9日、フランスの銀行最大手(当時)であるBNPパリバ傘下がファンド(金融商品)を凍結するというニュースが市場をかけめぐり、為替相場が混乱。その影響で各通貨が暴落し、一方的な円高を招いた。パリバのファンド凍結は、サブプライムローンが原因だといわれている。

*本ページの内容は2010年1月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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