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社会貢献活動レポート

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第42回 農業の景色を、担い手を、環境を 守る『生物多様性農業支援センター設立』


▲生物多様性農法に取り組む田んぼ(秋田県大潟村)

NPO法人
生物多様性農業支援センター
代表 原 耕造さん

5月22日、「田んぼの生きもの調査プロジェクト」は「生物多様性農業支援センター」(BASC/バスク)へと生まれ変わり、NPO法人として活動を開始しました。プロジェクト発足からわずか4年で発展的に解散し、あらたにNPO法人として発足することになりました。その背景には、社会的な情勢の変化が大きいといえます。2010年に名古屋での開催が予定されている「生物多様性条約第10回締結国会議(COP 10)」や5月に成立した「生物多様性基本法」など、最近、“生物多様性”という言葉が各種報道でも目立つようになりました。そんななか、生物多様性農業支援センターは、どのような役割を果たそうとしているのでしょうか。代表に就任した原耕造さんからお話をうかがったところ、「民間型環境直接支払い」というあまり聞き慣れない言葉が返ってきました。
(BASC/Biodiversity Agriculture Support Center)

米市場開放に埋もれて遅れをとった日本農政

「田んぼの生きもの調査プロジェクト」は、これまでも当コーナーなどで紹介してきたように、水田に生きる動植物の種類や数を観測することで水田の生物多様性を評価し、その生態系を活用した資源循環型農業の開発と普及を進めてきました。田んぼに生きるイトミミズが田を耕し、鳥やカエルは害虫を食し、藻類は抑草効果を持ちます。水田でこうした生態系を育むことができれば、化学肥料や化学合成農薬の使用を抑えた農業が可能となります。また、豊かな生態系は、それだけで環境を保全することにつながります。減反による耕作放棄地に比べ、水田があるだけで豊かな生態系=生物多様性を維持することができるわけです。「こうした生物多様性の豊かな田んぼを守る環境保全の取り組みに対価を支払うのが『環境直接支払い』なのです」と原さんは説明します。

「環境直接支払い」というしくみは、1993年のガットウルグアイ・ラウンドで認められた農業保護政策です。価格低下時や、中山間地域をはじめとする農業条件が不利な地域に対し、農家へ直接補償する制度を指します。環境保全に対する支払金もそのひとつで、日本でも農林水産省が「農地・水・環境保全向上対策」として2007年度から実施しています。しかし、その予算規模は、同じく導入した欧米諸国に比べて非常に少なく、国民への理解も低いといわざるを得ません。

「ガット合意では米市場開放は全体合意のほんの一部で、世界的には直接支払いの導入が農業の大きな転換点となりました」と原さんは説明します。「欧州では従来の農業政策が環境政策と合体し、環境直接支払いをすることで国内農業を保護できました。一方、日本は米の市場開放ばかりに意識が向いてしまい、直接支払いに国民の理解を得ることができなかったのです。これにより、日本の農業政策は15年ほど遅れてしまいました」。


国際会議などを通じて生物多様性が追い風に

ようやく日本でも“生物多様性”という言葉が、知られるようになってきました。5月に国会で成立した「生物多様性基本法」や2010年に名古屋での開催が予定されている「生物多様性条約第10回締結国会議(COP 10)」などは、記憶に新しいところです。

また、2005年には「ふゆみずたんぼ」に取り組む宮城県蕪栗(かぶくり)沼と周辺水田が、多様な生物が生きる湿地を守るラムサール条約に湿地として登録されました。今年10月に韓国で開催予定のラムサール条約締結国会議では、湿地と同様の役割を果たす水田の調査と保全を求める「水田決議」が採択される見通しです。田んぼを中心にさまざまな生きものが共存する環境を育もうという取り組みは理解を得られつつあり、社会的に大きな動きとなる兆候がみえてきています。

こうしたなか、BASCが目指す「民間型環境直接支払い」は、どんなしくみを想定しているのでしょうか。


環境保全の一部として位置づけ消費者が実感できるシステムに

パルシステムの産直産地では、化学合成農薬や化学肥料をできるだけ使用しない栽培を行っています。だからこそ、田んぼの生きもの調査を実施すると慣行栽培の水田に比べて多種多様な生きものをみつけることができます。ただし、こうした農業には、除草剤をまく代わりに草取りをしなければならないことをはじめ、生産者の手間が欠かせません。「そこで、農産物を生産する労力と、環境を保全するために費やした労力を切り離すのが『民間型環境直接支払い』の考え方なのです」(原さん)。

「ただし、消費者はそれぞれ可処分所得が違いますので、環境直接支払いをするかどうかは、購入者の意思に任されるべきです」と原さんは構想を説明してくれました。「環境保全に関心を持つ『グリーンコンシューマー』は現在、潜在的に消費者全体の3割ほど存在するといわれています。マイレージ制度のようなしくみをつくり、受け身だけでなく意思表示できるようなかたちにすれば、民間型の環境直接支払いは充分実現できるのではないかと考えています」。

たまったマイレージは、代金として決済するのではなく、人が都市と農村を行き来するきっかけとして活用していきたい考えです。「経済でなく行動をうながすしくみになるように、検討を進めています。田んぼの生きもの調査への参加がファッションになるような、それくらい消費者に浸透させていきたいですね。そのためにはより広い参加が必要です。生協で取り組んでいただくだけでなく、直売所や店舗など消費者がどこでも環境直接支払いができるシステムへと進化させなければならないと思っています」。


田んぼの持つ多彩な価値みんなで支えて持続可能に

田んぼにあるのは、稲だけではありません。そこには、カエルや微生物、トンボなどといった田んぼにすむ多種多様な生きものが存在し、稲は二酸化炭素を吸収して酸素を放出します。さらに棚田に象徴されるように、人々の知恵が凝縮され、人の心を和ませる景色をつくり、そして人の営みを生み出しているのです。BASCは、そんな農業を支援する「ナショナルセンター」として設立されました。「生産者は田んぼの生きもの調査で、消費者は環境直接支払いで、生物多様性農法を支えていただくことになります。生産者から集まった情報を集約し、ノウハウと一緒に還元する、消費者は買い支えと産地交流で生産者を応援する、そんな関係がこれからもっと築けたらいいですね」。田畑のある風景のすばらしさをいきいきと語る原さんの目が印象的でした。


コラム
BASC(バスク)と民間型環境直接支払い

NPO法人生物多様性農法支援センター(BASC)は、パルシステムや生活クラブ事業連合、東都生協といった生協のほか、JA全農、JAささかみ、大地を守る会など、生産者から消費者まで幅広い団体が参加して設立。これまでの「田んぼの生きもの調査プロジェクト」をさらに発展させた活動を展開していきます。

民間型環境直接支払いとは、たとえば、120円の品物があった場合、商品そのものの代金として100円を支払い、環境支払い金として20円かかることを明示します。これにより消費者は「自分は環境保全を担っている生産者に20円支払っているんだ」という実感が得られるようになります。

BASCは、こうして集められた直接支払いを生産者へ還元するほか、生産者の農業技術を集約したり、マイレージ制度を利用した田んぼの生きもの調査の紹介などを行います。

*本ページの内容は2008年8月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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