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ホーム > 社会貢献活動 > 社会貢献活動レポート > 第39回 アニマルウェルフェアとパルシステムの畜産事業の取り組み
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社会貢献活動レポート

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第39回 「生命への感謝」「食への感謝」という食育の視点で アニマルウェルフェアとパルシステムの畜産事業の取り組み

アニマルウェルフェア(Animal Welfare)という言葉を聞いたことがありますか。耳慣れない言葉だと思いますが、「動物がよく生きる」という意味です。牛や豚、鶏など、人間が食料としている動物(家畜)たちが生きている間は、「ストレスのない快適な環境で生活できるよう」にしてあげる考え方や取り組みのことを言います。 第2次世界大戦後、ヨーロッパで畜産のあり方自体が社会問題となり、1964年、イギリスで家畜の「5つの自由」が提唱されました。これがアニマルウェルフェアの原則となっています。
(1)飢えと渇きからの自由
(2)不快からの自由
(3)痛み、障害および病気からの自由
(4)恐怖と苦しみからの自由
(5)正常な行動をする自由
今、ヨーロッパでは、アニマルウェルフェアに基づいた飼育方法が規定されるなど、食品の安全性への関心の高まりを背景に、取り組みが進んでいます。パルシステムの産直事業では、アニマルウェルフェアにどのように取り組むのか、パルシステム連合会産直事業部の野村和夫部長にお話を聞きました。

国際的なアニマルウェルフェアの動きと日本の現状

「アニマルウェルフェアは、昔から家畜を食肉として生きる糧としてきたヨーロッパの人たちの、生命をいただくことへの感謝の上に培われた考え方と理解しています」(野村部長)。ヨーロッパでは、家畜は人間が食べる動物であり、そのためにと畜する(殺す)ものなので、家畜の生命に対する倫理観としてアニマルウェルフェアの考え方が生まれました。

それに比べて日本は、田んぼや畑の農作業、荷物の運搬などのために家畜を飼っていた時代が長かったので、ヨーロッパのようにアニマルウェルフェアについて話し合われることは多くありませんでした。

このような食文化の違いもありますが、ヨーロッパではアニマルウェルフェアに関するガイドラインづくりが進んでいて、2010年から、アニマルウェルフェアを付加価値として、「WQ(ウェルフェア・クオリティ)ブランド」の畜産物を販売、輸出していくことが検討されています。

こうした世界の動きを受け、日本でも、2006年に農林水産省所管の社団法人である畜産技術協会に検討委員会が設置され、日本の農業や食文化の事情を考慮した「家畜のアニマルウェルフェア」のあり方について話し合いを進めています。委員会ではアニマルウェルフェアを「快適性のある家畜の飼育管理」と定義し、2007年度から2010年度にかけて、乳牛・肉牛・豚・ブロイラー・採卵鶏など、それぞれ種類ごとにガイドラインをつくっていく計画が進んでいます。


アニマルウェルフェアに通じるパルシステムの「theふーど」と「畜産生産指標」

パルシステムの産直事業では、アニマルウェルフェアという表現はしていませんでしたが、これまでも家畜のストレスを減らす飼育方法を追求してきました。

パルシステムの産直肉は、「顔が見える」産直を実践しています。特徴は、(1)産地から食卓までの経路が明らか (2)薬(抗生物質等)に頼らない飼育の実践 (3)資源循環型の畜産の推進――の3点ですが、各産地で飼育環境を整え、衛生管理を徹底して、家畜を健康に育てています。抗生物質などの薬剤は、できるだけ使いません。

アニマルウェルフェアと通じるパルシステムの取り組みとして、野村部長は、「ふーど商品」と「畜産生産指標」の取り組みを挙げました。

「『theふーど』の産直肉は、“自由な行動ができる適正な飼養密度”“成長ホルモン剤の禁止”“全飼育期間飼料への抗生物質不使用”といった、アニマルウェルフェアに通じる基準を設けています。安全なおいしい肉は、家畜の健康が基本となるからです。パルシステムも、日本におけるアニマルウェルフェアの考え方を、より具体的な形にしていく時期にさしかかっていると思います。2006年度からは、パルシステム独自の『畜産生産指標』で生産管理の評価の取り組みが始まっています。これは、生産者と組合員、どちらにも安全を確保する目的で、生産者・組合員・獣医・畜産関係者が一緒に話し合ってつくりました。アニマルウェルフェアに関する項目も、指標の一つとして入っています」(野村部長)。


生産との両立を追求する実験が始まっている

パルシステムの「畜産生産指標」は、組合員の家畜の飼育内容を知りたいという思いに応え、生産者が自主点検に使うことができて組合員にその努力を伝えられるという、産地と食卓が近づくためにつくられた新しい指標です。産直肉の生産レベルを向上させるため、そして組合員と生産者がわかり合うために、豚、鶏、牛をそれぞれ専門とする3名の獣医さんに協力していただきつくった自主基準という位置付けになります。

全116項目からできていて、そのうち28項目を組合員監査項目としています。項目は三段階のレベルに分かれていて、A/必須項目、B/努力項目、C/チャレンジ項目となっています。生産者は、項目ごとに自己評価をします。その評価について、評価委員会で到達点と課題を検討するしくみです。

アニマルウェルフェアについては、「パルシステムの産直方針及び基本項目」の中で「アニマルウェルフェア(家畜福祉)の取り組みを目指している」という項目を設定し、レベルC(チャレンジ項目)に位置付け、組合員監査項目にもしています。 「消費者の理解や生産コストなどの課題はありますが、畜産経営において具体的にアニマルウェルフェアと生産性の両立を追求する実験が産地で始まっています。パルシステムの産直豚肉産地のポークランドグループ(秋田県)では、豚の肥育段階に、ドーム屋根と外壁だけの簡易豚舎で『バイオベッド(発酵床)飼育』と『大群飼育』という方法を実践しています」(野村部長)。

バイオベッドは、堆肥を豚舎の床に敷き詰め、ふん尿をそのまま堆肥処理するので、自然の浄化作用が働きます。それに加えて、豚が「土を掘る」「土を食べる」という生まれもった行動が多く見られるようになります。また、スペースに400頭が群れる「大群飼育」では、相応の広さがあるため、豚の「走り回る」「居たい場所が選べる」といった欲求が満たされ、異常行動や豚同士のケンカが少なくなります。

「このように大群飼育は、アニマルウェルフェア5つの自由のうち、『正常な行動を発現する自由』が確保できますので、豚の生活としても自然に近く、健康にもよいと確認されています」(野村部長)。 「『畜産生産指標』は、生産者が自己評価をするだけではなく、産地交流や公開確認会の場で組合員がしっかりと見て、理解して評価することが重要と考えつくりました。アニマルウェルフェアに関する項目も含めて、生産者と組合員がわかり合うことを重視しています。この『畜産生産指標』を、組合員のみなさんも大いに活用してほしい」と、野村部長は語りました。


アニマルウェルフェアに取り組む意義は「食育」

「パルシステムがアニマルウェルフェアに取り組むのはWQブランドを取って商品の市場価値を高めることが目的ではありません。アニマルウェルフェアは食育に通じます。家畜がどのように生まれ、育ち、そして食卓に届けられて人間が生きる糧となるのかを、子どもたちが知ることが大切なのです」(野村部長)。

畜産事業では経営的に成り立つことが求められますが、それとあわせてパルシステムでは、「生命への感謝」「食への感謝」という食育の視点からアニマルウェルフェアを考え、健康な食肉の生産の循環をつくっていくことを目指します。

野村部長は最後に、「“安全・安心”は商品の価値ですが、アニマルウェルフェアの考え方を通して、商品としての価値を超えた生命の大きな価値を生産者と共感し、その共感を組合員さんにつなげていきたい」と、思いを語りました。


*本ページの内容は2008年5月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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