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社会貢献活動レポート

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第38回 日豪EPA締結の問題点  食料自給率低下や生産者のくらしへの影響を危惧

▲パルシステム連合会
商品本部長
原秀一さん

日本とオーストラリア政府の間で、経済関係のさらなる活性化を目的としたEPA(経済連携協定)の締結交渉が進められています。モノやサービスだけでなく、投資、知的財産などについても自由に行き来できたり、連携協力したりできるようにするものです。協定が締結されればオーストラリアとの交流がさらに深まり、身近に感じるようになることでしょう。しかし一方で、深刻に心配すべき問題も存在します。それが、農畜産分野での関税撤廃です。食料自給率の低下への危機が叫ばれるなか、一大生産地である北海道では、適切なルールの設定を求める運動がはじまりました。パルシステムも、呼びかけ団体として署名活動を実施し、合計で31万筆を集めました。「EPAだけでなく、日本の食全体を考える機会となってほしいですね」と、連合会執行役員で商品本部長の原秀一さんは訴えます。

国産の2割担う北海道主力産品の関税が撤廃されると…

「オーストラリアとのEPA交渉で、農畜産物の関税撤廃が焦点となっている」――。この情報を受けてまず動き出したのが、国内随一の生産地域である北海道でした。国内の食料自給率40%を切るという深刻な状態にあるなか、北海道だけに限れば200%超となっており、カロリーベースで国産食料の2割を北海道産で担っています。日本の食を支えているといっても過言ではありません。

代表的な農畜産物は、砂糖の原料となるてん菜や生乳、小麦、牛肉など。どれも生産量は全国トップです。一方、オーストラリアが関税撤廃を強く求めている品目は、牛肉、小麦、砂糖、乳製品など。北海道で多くを生産しているものばかりです。北海道では行政、経済、消費者といった多くの団体が危機感を募らせる声明を発表し、活動領域の垣根を越えた「オール北海道」で適正なルール確立を求める運動を開始しました。


他の締結協定では「除外品目」に

EPAは現時点で、東南アジア、中南米の8カ国と締結がなされています。そのうち、シンガポール、メキシコ、マレーシア、チリの4カ国とはすでに協定が発効しており、人やモノを通じて幅広い協力関係の構築を目指しています。ただし、貿易立国であるシンガポール以外のすべての協定には、関税撤廃の例外となる「除外」項目が設けられ、米や麦、乳製品などについて国内生産者を保護するために関税をかけることになっています。日本政府が高関税を設けている「重要品目」の対象は、農産物品目数の1割程度で、平均関税率は12%と低い数値となっています。

▲EPA学習会の様子

しかしオーストラリア政府は交渉の席で、これら「重要品目」についても関税を撤廃するよう強く求めてきました。これはもちろん、日本への輸出量拡大を目的としたものです。ではもし、オーストラリアから輸入される小麦や乳製品の関税が撤廃されたら、どのような事態が発生すると考えられるかを次でみていきましょう。


道内生産者3割が経営できず

価格の安い生産物が輸入されれば、それだけ価格競争が激しくなります。しかし国内では、広い国土を活用したオーストラリア農業と同じコストで生産することはできません。たとえば生乳では、飼料費で4倍、費用合計で3倍のコストがかかります。輸入産品による価格崩壊で国内生産が採算割れを起こすようになれば、国内で生産しようと考える人は現れようがありません。これまで以上に農業離れが進むことになるのです。

生産量が減少すれば、それらを加工する乳業や製粉といった工場、運送する物流企業などへも影響が及びます。農業用機械メーカー、サービス業も例外ではありません。耕作放棄地は荒れ果て、農業を主力産業とする地域全体が崩壊していくのです。

道庁の試算では、農業と関連製造業、それらに関連する産業にそれぞれ4千億円超、合計で1兆4千億円近く影響するとしています。これは道の年間予算のおよそ半分、道内GDPの4・2%にも相当します。農業生産者は3分の1以上が経営を放棄。なかでも小麦とてん菜はほぼ100%生産されないようになり、工場も撤退することになるといいます。


GDP9兆円のマイナスも

影響するのは北海道だけではありません。農業が盛んな東北、九州地域も深刻な打撃を受けることになります。全国では農業生産高が3兆6千億円、国内総生産(GDP)は9兆円ほどのマイナスが予測されています。375万人分の雇用機会が失われ、その結果、現在でも危機的状況といわれる食料自給率が12%にまで低下するともいわれているのです。

また、オーストラリアとの関税が撤廃されれば、ほかの国からも同様に要求されることは想像に難しくありません。米国、カナダなどからも安い農畜産物が輸入されれば、国内生産者はさらに深刻な立場にさらされてしまいます。

これらの事態を危ぐしたのが、ほかならぬ北海道の人たちでした。行政、経済連、商工会、農協、生協などが一体となり「北海道農業・農村確立連絡会議」を結成。日本の農業を守れるようなルールづくりを求めていく運動をスタートさせたのです。


消費者の署名は大きな意義

▲署名提出の様子

北海道庁からパルシステムへ協力要請が届いたのもそのころです。「『こんせん72牛乳』に代表されるように、北海道にはパルシステムの産直産地が多く存在します。生産者を守るための運動に参加することは意義があるのではないでしょうか」と、原本部長は署名運動に参加した経緯を説明します。「パルシステムは、単に消費者だけの組織ではありません。生産者を含めた『生活者』の立場から日本の食を考えた場合、関税撤廃が与える影響は決して小さいものではないのです」。

食品を購入する立場からしてみれば、輸入された牛肉や小麦製品などが安く手に入るということはうれしいことかもしれません。しかし、輸入量が拡大することは、国内の生産者を圧迫することに直結します。「その意味で消費者である組合員からの署名は、交渉に臨む代表団への力になるはずです」。

署名はパルシステムだけでおよそ3万筆近くが寄せられ、参加団体あわせて31万筆が集まりました。「さらに大きなメッセージを発信するためにも、この機会が農業をめぐる環境や食にかかわる問題を考えるきっかけになってほしいですね」。

近年、さまざまな問題が噴出している日本の食。それらがなぜ発生しているのかを考えることが、本当はいちばん重要なことなのかもしれません。


*本ページの内容は2008年4月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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