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社会貢献活動レポート

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第33回 ——生きものの視点から、環境、農業、食を見直す——田んぼの生きもの調査 社会的責任と生協事業
▲カエル調査で畦を歩く(左)、田んぼのPHや水温を調べる基礎調査(右上)、水田内ビオトープを観察(右下)。 杉山農場/栃木県塩谷郡塩谷町にて撮影。
連合会 商品企画部 部長 栗田典子さん
▲連合会産直事業部田崎愛知郎さん。生きもの調査プロジェクト事務局長もつとめる
パルシステムの「田んぼの生きもの調査」は2004年、農薬や化学肥料を使わないというだけでなく、イトミミズ、ユスリカなど多様な生きものの力と水の力を活かす生物多様性農法を実践している4つの米産地で始まりました。この調査は、“多様な生きもののいる水田づくりこそが、安心な米づくりにつながる”ということを生産者と消費者が共に実感できたら、との考えから生まれました。
環境団体や農法研究の専門家とも連携しながら、2007年現在、パルシステム関連の11産地・地域、全国では52以上の産地・地域に広がっています。この8月には栃木県の有機水田で、日韓合同での「生きもの調査」も行われました。 大きなプロジェクトとして広がってきた「田んぼの生きもの調査」の魅力と意義を探ってみました。
取り組みの原点はパルシステムの目指す新しい農業
▲平成16年度報告書「田んぼの生きもの調査 実践編」 発行人・責任編集/田んぼの生きもの調査プロジェクト(注1
「おいしいお米は、微生物が住み、鳥が飛んでくるような多様な生態系と生命循環のある田んぼで、稲自体も、ひとつの生きものとして育ちます。こうした自然循環機能を活用した農業、生物多様性農法は、よい環境をも育みます。『田んぼの生きもの調査』は、『生きものの視点』から農業や環境、暮らしを見直す機会として始めました」と連合会産直事業部の田崎愛知郎さん。
パルシステムでは2001年に新農業委員会が発足し、農薬削減に止まらない環境創造・再生型農業の実現など、新しい農業のあり方を探る活動をしています。この新農業委員会の議論の中で、産地との交流事業をより実りあるものにしようと、当時の新農業事業推進室が提案した「生きもの観察」が、現在の「田んぼの生きもの調査」の前身です。「2002年には7つの産地でこの「生きもの観察」が始まりました。しかし生産者が生きものと農業の関係に興味を示していなかったことや、消費者も安心な米はほしいが、その米ができる背景にまでは関心が少なく、先細りでした。

米づくりは水田の生きもののつながりで成り立つ
その後、NPO法人メダカのがっこうの中村陽子理事長とNPO法人田んぼの岩渕成紀理事長と出会い、生物多様性農法の田んぼ(通常は水を抜く冬にも水を溜める、ふゆみずたんぼ)なら、水田環境の指標となるイトミミズやユスリカが大増殖することを教わりました。「岩渕さんの『微生物にはじまる水田の生きもののつながりのなかで、米づくりが成り立つ』という言葉に、『生きものと農法』の接点を見つけました」と田崎さん。この出会いから現在の「田んぼの生きもの調査」の形ができたそうです。

そして2004年には、パルシステムの4つの米産地、JAささかみ(新潟県)、JAみどりの(宮城県)、大潟村産地会議(秋田県)、ちば緑耕舎(千葉県)で「田んぼの生きもの調査」を生産者と組合員が参加し行いました。

翌2005年には、参加組織が、生活クラブ生協、東都生協など生協グループとその産地、各地域の土地改良区などへ広がりました。さらに調査手法の統一や農法研究を進めるために、パルシステム連合会とJA全農が事務局となり「田んぼの生きもの調査プロジェクト」(注1)を設置しました。パルシステムの取り組み産地も同2005年には6産地、2006年には8産地、そして今年2007年には11の産地・地域へと広がっています。

注1)田んぼの生きもの調査プロジェクト/2005年にパルシステム連合会、JA全農、(社)農村環境整備センター、NPO法人田んぼ、NPO法人民間稲作研究所、 (株)ゼネラル・プレスで発足し、生物多様性を生かした環境保全型農業の支援活動を行っている。

栃木県の有機水田で日韓合同の生きもの調査
▲採取された生きものを観察。トレイに入っていたのは1.タイコウチ2.ドジョウ 3.カゲロウの幼虫 4.ゲンゴロウ
2007年8月5日には、栃木県宇都宮市で「日・韓・中 環境創造型稲作技術国際会議」が開催され、その一環として「第2回日韓田んぼの生きもの調査交流会」が行われました。日本同様、水田稲作が盛んで、現在、有機稲作への転換を図っている韓国でも、生きものと水田・農法との密接な関係が認識され、生きもの調査が広がっているそうです。
今回「日韓生きもの調査」の舞台となった栃木県内の杉山農場は、日光連山から流れる荒川に隣接し、冬でも田んぼに水を入れる約30 haのふゆみずたんぼです。水田わきには生態系を育むビオトープを設置し、水田生物の復活に取り組んでいます。農薬を用いた近隣の田んぼに比べ、明らかに緑鮮やかな田んぼでは、カゲロウ、タイコウチ、ゲンゴロウなどの多様な生きものを見ることができました。
この調査には、「田んぼの生きもの調査プロジェクト」の発足時からのメンバーが顔をそろえました。同プロジェクト代表の原耕造さんは「自然を守り生きものを復活させる環境保全型農業こそ、私たちが今やるべきことです。『田んぼの生きもの調査』はそのためのツールであって目的ではないのです。まずは無心に田んぼに入ってみれば、価値観の転換が起きてくるはずです」と話していました。
NPO法人民間稲作研究所理事長の稲葉光國さんは「有機稲作は、ともすれば経営に結びつかない趣味の農業と思われがちだが、経営面でも成り立つことは、今日見た調査の現場が雄弁に物語っている。昨年末に成立した有機農法推進法もあり、今回の会議と田んぼの生きもの調査は転換期にある日本の農業にきわめて意義深いものです」と語りました。
田んぼは驚きと発見に満ちた宇宙のミニチュア

夏の炎天下、田んぼの泥をすくい、地べたでユスリカやイトミミズを数えるのは、予想以上に根気のいる地味な作業です。それでも多くの人々が夢中になる「田んぼの生きもの調査」の魅力はどこにあるのでしょうか。「田んぼの生きもの調査プロジェクト」の記録広報担当を4年間続けている原覚俊さんは次のように分析します。

「消費者が、『初めて田んぼのミミズを見た!』と喜んでいる一方で、地域一番の農業のプロと自認していた農家が、『農業歴50年で、自分の田んぼに住むミミズを初めて見た』と驚いている。お互いに顔を見合わせて笑ってしまう。そんな光景が楽しいですね。産地交流といっても、生きもの調査では、消費者は都会からやってくるお客さん、という扱いではありません。生産者も消費者も同じ生活者としての視点で参加できる。そこに面白さがあります。農家の人は外部の人に対して閉鎖的なことも多いのですが、生活者という同じ視点で、仲間として生きもの調査をすることで、初めて心を開いてくれるんです」。

「ほんの数時間観察するだけで、カエル、クモ、メダカ、ときにはホタル、畔の草花など、何十種類もの生きものが見つかり、生きもの同士が支えあってバランスをとりあって生きていることが実感できる。田んぼは生態系のひとつの単位であり、地球のミニチュア、宇宙のミニチュアであることに気づく。殺虫剤や化学肥料で人間の都合のよいようにコントロールできるようなものではない、とやっと気づくことができるのです。こういうところに惹きつけられるのではないでしょうか」。(原さん)

パルシステムの理念を体現する田んぼの生きもの調査

「田んぼの生きもの調査プロジェクト」には、すでに長い地域で5年分、全国の田んぼの記録100枚がストックされています。ホームページや冊子で一般公開され、農法研究に役立っているそうです。

「この7月には農林水産省でも生物多様性戦略を策定し、生物多様性保全を重視した農林水産業を強力に推進する、としています。パルシステムでも生物多様性農法や田んぼの生きもの調査をますます広げていきたい。環境問題や有機農法に関心のある消費者へのアピールで行っているのではなく、“心豊かなくらしと共生の社会をつくる”というパルシステムの基本理念を体現した取り組みであり事業だからです」と田崎さんは力を込めました。

今日、“食の安心”という言葉がごく当たり前になっているように、数年後には生物多様性農法や、田んぼの生きもの調査という言葉も浸透していくことを期待したいと思います。

*本ページの内容は2007年10月時点の情報です。最新の情報とは異なる場合があります。あらかじめご了承ください。

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